番犬男子





そこには、誰かを囲むように女子が大勢群がっていた。


なに?

アイドルでもいるの?




「今日も麗しい……!」


「今、彼女っていますかぁ?」


「これから一緒にカフェに行きません?」


「写メ!写メ撮らなきゃっ!!」




女子たちが誰かに、目をハートの形にしながら積極的にアピールしたり、ただひたすらうっとり見惚れていたりしていた。


チョコレートよりも甘ったるい猫なで声と、金切り声に近い甲高い騒ぎが、絶え間なく繁華街を揺らす。




そんなにイケメンなのかな。



ちょっと興味が湧いてきて、遠目から女子たちに騒がれている、モテモテな人を見ようとした。


が、女子が多すぎて、なかなか見えない。




これは無理かな。


すぐあきらめて、たまり場に行こうとした。



直後。




「ユキノさんっ!!」




聞き覚えのある名前が響いて、動かそうとした足をピタリと停止させた。