番犬男子






お兄ちゃんの意図を察した時には、すでに遅く。


あたしより断然速く家の前に着いたお兄ちゃんは、ヘルメットをかぶり、バイクに乗った。



エンジンがかかり、盛大に音が鳴る。




やっぱりわざとだったんだ。


走るのに夢中で頭が回らなかった。




「じゃあな」



疲れきったあたしの横を、お兄ちゃんがバイクで颯爽と横切る。



バイクはすぐに視界から消えて。


あたし1人、この場に取り残されてしまった。



ボロボロな足を止め、ぜえぜえ、と肩で呼吸を繰り返す。




あー、もう!


お兄ちゃんのバイクに乗ってる姿、さいっこうにかっこよかったけど。

……けど!



「悔しいー!!」



近所迷惑と承知の上で、ついつい叫んでしまった。



さっきだって無理だったのに、バイクを追いかけても追いつけっこないじゃん。