でももう一度、あの地獄の日々に舞い戻っても、強くあり続ける自信は、ないけれど。



「美樹ちゃんおはよー」

「おはよう」



下駄箱のところでクラスメイトに声をかけられた。笑顔で挨拶を返すことができた。
靴からうわぐつに履き替える。その足で私は屋上へと向かった。


たどり着いた屋上にはまだ、隼人くんがいなかった。


私はかばんを入り口の近くに置いて、少し奥に進んで深呼吸。


泣いてもう一度死のうと思った日も、恋をしたと実感した日も、きみが私を好きだと言ってくれた日の空も、全部、ぜんぶ、違う。


同じ場所、同じ高さから見ても、全然違う。
空はとても気分屋なアーティストだ。
晴れだったり、曇りだったり、雨だったり。
時には氷を降らして、雷をも落とす。


目を閉じて、幸せの記憶上映会を開始する。まず映し出されたのは、隼人くんの笑顔で、そして……。



「ゆり」



声が響いた。
これは脳内の映画館からした声ではない。
目を開けると振り返る。


するとそこには隼人くんがいた。



「おはよう」

「おはよう、隼人くん」



自然と笑顔になってしまう。今日も会えた喜びに飛び跳ねたくなる。



「デレデレだね」

「ダメかな?」

「そんなことないよ」

「教室で気をつける……」

「できる?」

「頑張る……!」