カチっと、どこかで音が鳴った。
運命が、逆向きに動き出したような、そんな感じだった。



「僕がゆりを笑わせるよ」

「…………」

「だから生きよう。最後まで」



私の手に、隼人くんが手を重ねた。


きみはもしかして、私がつくりあげた幻想かなにか?


そう考えてしまうほど、隼人くんは私の凍てついた心をじわじわと溶かしてくる。ずっと欲していた言葉をくれる。


まるで、私が作者の、物語のヒーローみたいだ。


私はまた溢れてきた涙を流し、でも、笑って頷いた。


生きたい。隼人くんがそばにいてくれるなら。生きてみたい。


笑って、幸せに。最後ぐらい、これが私のつくりあげた夢だったとしても。


甘えていいよね?


私がこの世界からいなくなるまでは……。