「実は昨日はじめてきみを見たとき、もしかしたら綾瀬さんじゃないんじゃないかなぁって思ってたんだ」
「どうして?」
「空を見て、泣くのを我慢してる横顔がかっこよくて見惚れてた。綾瀬さんは、自分の感情に正直な人だから、自分の感情を押し殺して上を向くなんて変だなって思ったんだ」
「……⁉︎」
見惚れる?かっこいい?
自分を指している言葉とは思えないワードが立て続けに出てきたことに、驚くことしかできない。
「話してみたらやっぱりいつもの綾瀬さんじゃないし」
「うん……」
やっぱり、私と綾瀬美樹は違う人格の持ち主なのだろう。
「……もっと話してくれる?ゆりのこと」
「…………」
……私のこと。
彼の言葉を噛み砕くように、自分の言葉で脳内で反芻させる。
何度も助けを求めて誰かに相談しようと思って、でも、できなかったこと。
両親にすら、言えなかったのに。
昨日初めて出会った男の子に、なんと説明すれば……。
「ゆっくりでいいから。ね?」
言葉を詰まらせていた私の背中を優しく隼人くんが撫でる。
頷いて、言葉を探した。
なにから説明したら、伝わるんだろう。
私のなかの真実。ひとりで抱えてきた重すぎる想い。ずっと秘めてきた、辛い出来事たち。
「……生きるか死ぬかをずっと迷ってた」
「うん」
「高校生になってすぐ、クラスの女の子から目をつけられて、見た目のことでいじめられるようになったの。私、本当は、地味で根暗で、見た目もガリガリで色白で、幽霊みたいだったから……幽霊って、呼ばれてた」
「うん」
頷いて、私が言葉を迷ったり、すんなり話せなくなるたびに「大丈夫だよ」「焦らないで」と背中を優しくさすられる。



