リボンと王子様

「穂花……」


深いキスの合間に紡がれる自分の名前が。

千歳さんの声が。

切ない色香でいっぱいで。

涙が止まらなくなる。


そんな私を千歳さんはギュウッと胸に閉じ込めた。


「……千歳さん……」


千歳さんが私の髪を丁寧にすく。


「……初めて穂花に会ったときと同じ長さになったな」


コクン、と頷く。


トクン、トクン……。


規則正しい大好きな人の鼓動が聞こえる。

背中にまわる千歳さんの大きな手が何より愛おしい。


「……なお、穂花。
ひとつ、聞いていい?」


髪に唇を寄せながら千歳さんが不意に言った。


「……何?」

「……瑞希のことなんだけど」

「瑞希くん?」


キョトンとする私に。


「……何か言われた?」


脳裏に空港で別れた瑞希くんの姿が浮かぶ。

咄嗟に返事に詰まった私を見て。


「……言われたんだ」


千歳さんが夜色の瞳を細めて言った。


「……告白された、けど……ちゃんと断りに行ったよ……千歳さんが好きだからって。
……瑞希くん、私が千歳さんを好きなこと、気付いていたよ」


そう、いつも誰よりも近くにいて、私を守ってくれた。

優しさで包んでくれていた。


……最後まで瑞希くんは瑞希くんだった。


「……ふうん」


千歳さんは何か考え込むように黙りこんだ。

それから口を開いた。


「……瑞希が穂花を好きだってことは俺も知ってた。
単純にうまくいけばいいなって思ってた。
あの時は穂花が俺が探していた人だって知らなかったから。
今更、態度を変えて卑怯だと言われるかもしれない。
でも今は、たとえ瑞希にも譲れない。
穂花は俺の、俺だけの穂花だから」


その言葉に。

今更ながら頬がカアアッと赤くなった。


「……う、うん」

「……っていうか。
瑞希から告白されたことも聞いていないし、そもそも断りに行ったって何?」


ニッコリと魅力的な微笑みを浮かべながら千歳さんが私の髪を一房掬った。

しどろもどろになりながら瑞希くんに告白された状況と空港でのことを話した。


「……ふうん」


案の定。

面白くなさそうな表情で千歳さんは私の髪をすく。

悪いことをしたわけでもないのに居たたまれなくなる。