リボンと王子様

一瞬。

全ての音が消えて。

呼吸が止まりそうになった。



今のは空耳?

どうして……?

そんなことを言うの?


涙が滲んで、唇を噛み締めて俯く私に。


「……傷つくから、噛み締めるなって言っただろ……?」


いつかのように。

私の唇に人差指が触れた。


もう片方の手は私の頬から耳元にかかる。

唇に伝わる温もりに。

耳を覆う大きな手に。

心が大きく軋んだ。

見上げた私の瞳に映った闇色の瞳は痛いくらいに切ない色を含む。


どうしてそんな瞳で私を見るの……?



胸が千切れそうなくらいに痛い。

声が出ない。


どうしてそんなに優しく触れるの。


どうしてそんなに大事にしてくれるの。


期待してしまいそうになる。


まだ間に合うのかもしれないと。




気持ちがパンパンに膨らんで。

どうしようもなくて。


……限界だった。


必死に言い聞かせてきた私の決意は砂山のようにボロボロと崩れて。

堰を切ったように涙が溢れた。


千歳さんが少しだけ目を見開いた。


「……ごめ、なさ……い。
謝って済むことじゃない……私、私っ……」


言葉にならない私の声を。



彼は優しい唇で塞いだ。