リボンと王子様

「……ごめん。
穂花に会えるように須崎社長と母さんに頼んだんだ」


バツの悪そうな顔の千歳さん。

久し振りに真正面から見る彼は相変わらず魅力的な男性だった。


「……え?」


まさか……!

公恵叔母さんの場所変更って……!

有子おばさまの展覧会って……!

目の前の千歳さんを凝視する。




……千歳さん。



声にならない声で名前を呼ぶ。

千歳さんが目の前にいる。

恋い焦がれた人がこんなに近くにいる。


ただ、それだけで。

胸が詰まって。

声がでない。


ああ。

私はこんなにも。

この人に会いたかったんだ。


会うことを恐がりながら。

話すことを避けながらも。

私は千歳さんを想っていた。

私達の関係にはもう希望がないとわかっていても。


「騙すようなことをしてごめん。
でもこうでもしなきゃ、穂花は俺に会ってくれないんじゃないかと思ったから……散々酷いことをした俺には」


辛そうに端正な顔立ちを歪ませて、千歳さんは私に向き直った。


「……穂花に話したいことがあるんだ」


漆黒の瞳に真剣な色が浮かぶ。