『俺のことだけ見て、俺のことだけ考えてればいいんだよ、田中さんは』





保健室で葵くんに言われた言葉の意味を、ずっと考えている。


ねぇ、葵くん。

あれはどんな気持ちで言ったの?





『……っ、じゃあ俺行くから』





結局あの後、葵くんはこう言って出て行ってしまったけど……。


ガヤガヤと騒がしい昼休み。

陽菜ちゃんと一緒に購買へ行った帰り道の廊下。




下げていた目線を上にあげてから、少し後悔した。



……大野くん。




私と目が合った大野くんは、何か言おうと口を開いて、また閉じた。


私も目を逸らして、彼の横を通り過ぎる。



キスされたあの日から、もうずっと大野くんと話せてない。