今度は誰も花と視線を合わせようとはしなかった。


巻き込まれたくないという気持ちが嫌というほど伝わって来る。


あたしも、花と視線がぶつからないように雑誌を眺めるふりをした。


「悪い事をしたら謝るって、子供の頃習わなかったか?」


涼の言葉に花は震え始める。


謝って許されるのなら、そっちの方が楽だと思い始めているかもしれない。


「あたしは何も……」


花が最後の抵抗にそう言った直後、涼がまた別の机を蹴り上げた。


仲の教科書が散乱し、女子生徒たちが悲鳴をあげる。


花はビクリと体を震わせて、涙を浮かべた。


「……ごめんなさい」


か弱い花の声が聞こえて来た。


「最初からそう言えばいいんだよ」


涼のとても冷たい声と美桜たちの笑い声は、灰色のモヤとなって流れて行ったのだった。