「化粧してみたかったの? それともブランド物を持ちたかった?」


未来がそう聞きながら花に近づいていく。


花はまた左右に首を振った。


「違う……あたしじゃない……」


その声はかすれていてひどく弱弱しい。


クラスメートたちは花を見てコソコソと噂話を始めている。


灰色のモヤが徐々に教室に蔓延して行くのが見える。


あちこちから聞こえて来る悪口は、死者のパワーになる。


「泥棒」


美桜が言い放った一言で、花は凍り付いた。


教室内から笑い声が聞こえて来る。


モヤはどんどんロッカーへと移動していく。


こんなにも簡単に人の関係は壊れて行く。


花の味方は、もういない……。