☆☆☆

夜の旧校舎には随分と馴れて来ていた。


懐中電灯の小さな光1つでも、もう恐怖を感じない。


それよりも今日ももうすぐお母さんに会えると思うと、嬉しくてたまらない。


ロッカーの前に立ち、2時が来るのをドキドキしながら待つ。


「奥山美咲、奥山美咲。奥山美咲」


3度唱えると、またロッカーの中の空間が歪んで見えた気がした。


そして次の瞬間にはお母さんがロッカーの中に立っているのだ。


「また会えてとっても嬉しいわ」


お母さんはそう言ってあたしの頭をなでてくれた。


「昨日は親父に会ったんだ」


「えぇ。向こうであの人から聞いたわよ。あの人、子供たちの前で沢山泣いてしまったって、恥ずかしそうに言ってた」


お母さんはそう言うと、クスッと笑った。