まるで夢のような時間だった。


お母さんは生前のお母さんそのもので、何も変わりはなかった。


家に帰ってからも抱きしめられた感触や、香りが忘れられない。


あの噂は本物だった。


まだ信じられないけれど、あたしたちは本当にお母さんに会って来たのだ。


けれど、その事は他言しない事になった。


噂が本当だと知れ渡れば、誰もがあのロッカーに殺到するだろう。


そうなると自分たちが両親に会える時間が減るかもしれないと考えたのだ。


噂を教えてくれたアカリには感謝しているけれど、アカリにだって本当の事は言えなかった。


2人だけの秘密だ。


あたしは緩む頬を必死で引き締めて、目を閉じたのだった。