満面の笑みを浮かべるお父さん。


「うそ、本当にここから離れられるの?」


「そうだよ。お前たちが頑張ってくれたおかげだ」


「一緒に、家に帰れるのか?」


「そうだぞサク。お前が頑張ってくれたおかげだ」


お父さんの言葉にサクの目に涙が浮かんだ。


「親父、俺のこと怒ってないのかよ」


「怒る? どうして怒る必要があるんだ?」


「だって、俺……」


サクはうつむき肩を震わせる。


「サク、泣かないで。誰もサクを責めたりなんてしてないんだから」


あたしはそう言ってサクの背中をさすった。


双子で生まれて同じように育ってきたけれど、やっぱり男のサクの背中は大きく感じられた。


「サクは泣き虫だなぁ。ほら、みんなで一緒に帰ろうか」


そう言って、お父さんはロッカーから離れた。


ロッカーの奥に一瞬だけお札のようなものを見た気がしたけれど、それはすぐに闇に紛れて見えなくなったのだった。