「サク。やめなよ」


あたしは隣から手を伸ばした。


が、サクに突き飛ばされて床に転がってしまった。


サクにこれだけの力があったなんて、今まであたしは知らなかった。


「両親が戻ってくれば、お前なんて必要ないんだぞ! この家だっていらない! そうだ、そもそもお前が死ねばよかったんじゃないか?


だって順番が違うじゃないか! どうしてお前が生きてて俺の両親が死ななきゃならなかったんだよ!!」


それは絶対に言ってはならない言葉だった。


誰かの代わりに誰かが死ねばいいなんて、絶対に口にしてはいけない。


目の前にいるサクはまるで別人だった。


祖母の胸倉をつかんだまま罵声を浴びせる姿は、まるで悪魔のようだ。


祖母の頬には幾筋もの涙が伝って流れている。


「サク!」


あたしがそう叫ぶと同時に、サクの手が祖母の細い首にかかっていた。