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その夜はお父さんと2時間半会話できる時間を貰えた。


少しずつ、少しずつだけど時間は確実に長くなってきている。


「ねぇお父さん。場所を変えることはできないの?」


いつも湿っぽい旧校舎の『ロッカールーム』にいるあたしはそう聞いた。


「ごめんな。この場所を離れるためにはもっともっと力が必要なんだ」


お父さんは申し訳なさそうにそう言った。


もっともっと、か……。


今でも色々と考えて頑張っているのに、これじゃ足りないのだ。


そう思うと気が遠くなってしまいそうだ。


けれど、頑張ろう。


両親ともう1度外へ出て歩けるようになるために。


「そのためにはどうすればいい?」


そう聞いたのはサクだった。


「そうだなぁ。例えば人の汚い欲望は1つだけじゃない」


「どういう意味?」


あたしが聞く。