通ってきた部屋は全部和室だったと見受けられたのだが、この部屋もまた和室のようだった。
電灯を照らせば確かにその部屋は広いようだが劣化が進んでいるようで襖は破れて倒れているし、どこのかも分からない木材も転がっていた。
「只の廃屋って感じで何もないねー」
「いやいや、一家心中してんだからその部屋に行けばなんかあるって」
ぎゃははと笑い合いながら二人は彼方此方と頭を動かしている。
だが、特にめぼしいものなどないのだ。と言うか経年劣化で荒れているものの、基本的にこの屋敷は綺麗すぎるくらいに綺麗なのだ。
肝試しと言うからには破棄された家で、生活感のあるものが散乱しているようなイメージを持っていたので予想外だった。
件の事件があってから清掃はきちんとされた後に破棄されたと推測できる。
「っ?!」
そんな何もない部屋だからこそ、それがポツンと一つ落ちていた事にゾッとした。
赤い薄汚れた着物を着た日本人形。
それが部屋の隅に横たわっていた。


