何かを踏み砕いたような感覚。
それに気づいた瞬間には、歩いていたつま先で固い物を蹴っていた。
「ひっ!?」
転がったのは首。首だ。
くりっとした目が此方を見ていた。
踏み砕いたのは人形の胴体だったらしい。蹴ったのは人形の頭だったらしい。
気付いた時にはサーっと血の気が引いてしまっていて、思わず握っていた手に力を込めていた。
「うっ……うわっ!?なーにやってんだよ、祟られっぞ〜〜」
場を明るくしようと肝試しの主催者はケラケラと笑って見せてくるのだが、声は固い。
人形で遊んでおきながら、人形を明らかに傷つけてしまう事に恐れをなしたのか。
だってそうだ。心霊の類でよく人形というのは出てくる。不気味に思わないはずがない。
それこそ、祟られてしまうのではないかと恐怖が襲った。
じわりじわりと不安感が襲う。
ツーっと背中に汗が伝う。
「ど、どうしよう……!」
縋るような気持ちで勢いよく顔を上げた。
先まであんなに慎重だったのに、目先の恐怖に襲われた結果だった。
「ひっ?!」
それを“彼ら”は嘲笑ったのだ。


