「大丈夫?」
「ん、へーき」
気遣うように問いかけるも、まだ平気だとは思えない。体調が悪いと言って見たもののそれは口実で、実際の彼女がどうなのかは分からない。
「髪の長い女の人~~、とか屋敷を走る女の子~~とかを見たって言う人多数だって聞いたんだけどなぁ」
「女ばっかかよ」
「ん?そういや、こういうのって大体女だよな。……やっぱガセの類か」
前を歩く彼らの話を何となく耳に入れながら、差し当たった二階へと続く階段前。
先も確認したけれど確かに階段が崩れてしまっていて、行けそうにはない。
それを知りつつも、何となくまた二階へと視線を向けた。
一段、二段、三段。その先は朽ちて崩れて数段抜けている。
そして途中からまた始まる階段を視線で上がりきった。
その先に見えたのは、血の通ってなさそうな真っ白い足。
裸足の小さな足の主は赤い着物を身に纏っているようだった。
「っ!?」
そう当たり前のように情報だけを受け取っておかしいと気づく。
何かが階段の一番上に立っている。誰かが居る筈なんてないのに、そこに辿りつけるわけがないのに。
「はっ……はぁ……」
足が動かない。心臓がバクバクと音を立てて、呼吸が浅くなる。
それでも目が上を向いていく。“それ”が何なのかを見たくないのに確かめようとしてしまう。
赤い着物の裾を辿って黄色い帯へ。帯留めにあしらわれているのは何かの花。
左が前になった襟を抜けて細い首筋に。
もう少しで“それ”の頭部に視線が合いそうになった時、また腕が強く引かれた。
その行動によって視線は彼女へと戻る。
「――織、駄目だよ、此処には五人だけなんだから」
俯いたまま、声を潜めて彼女はそう言った。


