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まだ終わる事のない肝試しは、それ以降に不可思議な物に出会う事などなかった。
妙に綺麗な廃屋。それだけで完結する程に。
人間とは不思議なもので、少し時間が経つだけで冷静を僅かでも取り戻してしまうらしい。
「ほんっとなーんもないなぁ。なぁ、帰ったらそれ見せてくれよな。何か映ってるかも」
「はいはい、分かってるって」
先の一件で何かを感じていない訳でも無い筈なのに、そんな軽口をまた叩いているのだ。
対して、私の傍を離れなくなった彼女は殆ど口を開く事が無くなった。
只管に俯いて足元だけを見ている。
先まで明るくふざけていたのが嘘のようだ。そんな様子を間近で見ているからこそ、逆にこちらも冷静になれるのかもしれないが、心配にもなってくる。
「あのさ、結局何もないみたいだし帰らない?ちょっと体調悪いみたいだし」
と、隣の彼女を指させば、俯いたままにコクコクと縦に頭を振る。
「っ……」
次いでぎゅうっと両手で私の手を握り込む始末。明らかに様子がおかしくなっている。
その様子は傍に居なくとも感じ取れたのか、彼は今一度辺りを見渡してからコクリと頷いた。
「そーだな。一階に何もないって事は、心中場所も二階っぽいしな。これ以上は無意味か」
「う~~ん、パッとしない肝試しだったな」
「って言うか、心中場所ってだけで何が出るって話なんだっけ」
そんな会話をしながら踵を返す。
隣では、彼女が少しだけ息を吐き出したのがわかった。


