しかし、誰もが深く考えずに、誰もが深く考えたくないとその現実から目を逸らした。
不意にカメラのレンズが彼の手元に向く。
「って言うかお前それ、何持ってんの?」
「ああ、これか?これはお前らを脅かそうと思って……ほら」
ネタバラしをして今更脅かすも何もないだろうが、カメラを持った彼の傍から手元を覗きこんでいたもう一人に半ば投げるように寄越す。
「うわわっ!?こっち寄越すなよ汚ねぇ!」
反射的に両手を出してしまったのだろうが、手からはすぐさま人形が落とされる。
粗雑に扱われたそれは、ゴトッと無機質な音を立てて床に横たわった。
「あーーあ、呪われっぞ」
ケラケラと笑って見せ、その人形をそのままにしてまた奥に歩き出す。
人形を持ってきた張本人なのに、その笑いが渇いていたように聞こえたのは気のせいだったのだろうか。


