二人してここで身を固めていても仕方がないので、ゆるりと立ち上がり恐る恐る彼の後を追い始める。
彼の背を見つけたと同時に声は上げられた。
「おわ?!お前ら二階にいんじゃなかったのかよ?!」
「二階?いや、二階の階段あっちにあったけど崩れててとてもじゃないけど行けないぞ?」
「でも運動神経があればなんとか飛び移れそうではあるけど」
あくまでも自分たちは一階にいたと主張し首を振る。
「じゃ、じゃあ今上で走ってたのって……」
「いや、廃墟なんだから軋んでたんだろ。普通に考えて」
震える声で彼女が結論を求めるも、また軽快な彼の声によって打ち消される。
正論と言えば正論。しかし、これを脅かす為の手札にすらしないのは彼も気づいたからなのだろう。
二階の音と彼自身が小走りした音。音の重さは違えど、その種類は同じだったと。
誰かが二階で走ったのだと。


