謎に感じる恐怖がそう錯覚させたのか。
「っ、」
思わず握り込んだ手は酷く冷たい。
いいや、違う。誰かと手を繋いでいたなんてあり得ない。有り得るはずがない。
これは気のせいだと首を横に振って、二人の真後ろに歩み寄る。
「ね、ねぇ、それは流石にやめた方がいいんじゃないかな?」
「あり?織どうしたの?急に顔強張ってない?」
「大丈夫だって、心配しなくてもちゃんとこの場に戻すからさ」
「そういう……っきゃぁ?!」
そういう事ではない、と反論しようとした時、二階で軽快に駆けるような足音が聞こえて反射的に叫んでしまった。
きぃ、きぃ、と嫌な音。
彼女も少なからず驚いたようで身を固めて反射的にまた私の手を取った。
じんわりと滲む汗には確かな体温を感じた。
「なーにびびってんだよ。アイツらが二階に行ってんだろ。脅かしてやろーー」
ククッと笑いながら、至極真っ当な見解を持ち出して、ヒョイっとその人形を手に持つ。
小走りに部屋の出口に向かう彼の足元からはギィギィと大きく軋む音がしていた。


