「……はあ……」



その姿が見えなくなってから、堪えきれず深いため息をついた。

好意を寄せてもらっておいて、この態度。……こんな俺は、たぶん最低だと他人から評されるんだろう。



『うお、すげーなヒロ。バレンタインチョコ7個も貰ったん?』

『あー』

『しかも、明らか手作りっぽいのもあんじゃん。これお返しどうすんの?』

『……なにが?』

『なにがって……普通バレンタインデーに貰ったらホワイトデーはお返しだろ』

『なんで? 別に俺、欲しいなんて言ってねぇし。貰えるもんは貰うけど』

『……おっまえひでー奴だなあ』



まだ中学生だった頃。いつだったか、悠介とそんな会話を交わしたことがあった。

外見的にも精神的にも多少は成長した今思えば、たしかに自分はひどい奴だ。

それでもこんな俺だって、あんなふうに自分に寄せられる好意を拒絶して、何とも思わないわけではない。


悪いな、と思う。なんで俺をとも、こんな俺をすきになって不憫だとも。

だけど、ありがとう、うれしいだなんて生やさしいセリフは、口が裂けても言えない。


──俺が欲しいのは、アイツひとりだけだから。