職員室から鍵を借りて、雨の中部室を訪れる。

予想は的中し、ロッカーの中には今朝自分が使ったタオルが放り込まれていた。無事にそれを回収して、肩にかけているエナメルバッグの中へ突っ込む。



「雨、強くなってきたな……」



今度こそ帰宅しようと内側から部室のドアを開けて見上げた空模様に、思わずつぶやいた。

頭上にはどんよりとした灰色の雲。しばらくはこの地域から動きそうにもないようだ。

これからまた、さらに強くなるのだろうか。部室に鍵をかけた俺は着ていた学ランを脱ぐと、ワイシャツの袖を腕まくりする。

そうして学ランを頭からかぶり、雨の中を駆け出した。

ああこれ、母さんに小言もらうパターンだな。校舎を出るときはまだ小雨だったから、傘持たなくてもいいと思ったんだけど……どうせ、鍵を返しにまた校舎には戻らなきゃならないし。

タオルを回収しがてら、ついでに今日のミーティングのことを部誌に書いていた時間が余計だったらしい。

まさかその短時間で、こんなに激しい雨足になるとは。


部室から校舎までは、約数十メートル。どうにか学ランでガードしながら走れば、それほど濡れずには済むだろう。

しかし俺は、その数十メートルを走り抜ける間に見知った人物とすれ違いかけ……とっさに呼びとめた。