再びその場に生徒の声が聞こえるまで、あたしたちは口を開かなかった。
「どうして佐伯さんが言い切るの? 彼のことを理解してるから? それならなおのこと、佐伯さんが彼のそばにいるべきね」
……もう嫌だ。
この人、意地でも認めないつもりだ。
瑞貴のことも、自分自身の気持ちも、全部なかったことにして。
「……人の気持ちを考えない、嫌な先生に戻ったね」
「それはよかったわ」
先生はあたしを置いて、歩き始めた。
あたしは壁に背中を預けた。
なんで嫌な先生に戻って、よかったなんて言うの?
瑞貴と過ごした数ヶ月を、なかったことに出来たから?
……なにそれ。
瑞貴が可哀想。
ていうか……あたし、なんで先生のところに行ったんだっけ。
先生には瑞貴を笑顔にしてほしい……みたいなこと言ったけど、本当は宣戦布告しようと思ったんだ。
あたしも瑞貴が好き、正々堂々勝負しよう、みたいな。



