「…もう、3時か。そろそろ準備しないとだな」

「あ…、そうですね」


せんぱいと少し距離をとって、控え室にかかっている時計を見ると、短い針はいつもの“ 3 ” を指していた。

これから、わたしたちの時間は始まる。



「今日はせんぱいが早く起きたから、たっぷり時間ありますね。よかった」

「…悪かったな、毎度毎度眠ってて」

「そんなこと言ってないじゃないですか」



毎回 毎回、同じ時間。

同じ控え室、せんぱいと2人きり。

そんなひとつ屋根の下で、生まれた小さな奇跡。


せんぱいと出会えたという、奇跡。



「…凰香ちゃん」

「…?なんですか?」

「今日、バイト終わったら、どこかご飯食べに行こう。俺とデートしてよ」

「………え!? デート…!?」




せんぱいと過ごしたこの時間を、わたしはずっと忘れることはない。



——ねぇ、せんぱい。

わたし、これからもせんぱいに追いつけるように、頑張るから。


だから、覚悟しててね。




—きみと夢の中でも、会えるように—




【おわり】