「…本当は、初めて会った時から、いいなって思ってたよ。毎回、俺のために差し入れ持ってきてくれんのも、気を遣ってくれんのも、ちゃんと起こしてくれんのも、すごく嬉しかった」

「…せんぱ…、」

「いつも、凰香ちゃんの声で、夢から覚めたいって思ってた」



…人と気持ちが繋がるって、不思議だ。

今まで1年間、せんぱいのことを想うのはくるしいとさえ思ってた。

絶対に届かないと思ってた。

わたしばかり、せんぱいの後を追っているんだと思ってた。


でも、そうじゃなかった。

せんぱいも、わたしと一緒に歩いてくれていた。



「…俺、本気ですきになったら結構しつこいよ。それでも、俺の彼女になってくれる…?」


この恋は、にがいと思ってた。

でも、せんぱいが、甘い言葉をくれるから。

そんなものは、どこか遠くへ飛んで行ってしまう。



「せんぱいの、彼女にしてください」



ぎゅっとしまる身体。

その強い力に、加野せんぱいの大きな気持ちが込められているって、初めて知った。



「…すげー嬉しい」

「…うん、わたしも…」


「気持ちが通じてるって、こんな気持ちいいんだな。初めて知った…」



わたしの存在を確かめるように、何度も何度も込められる力に、またひと粒涙がこぼれ落ちてきた。


大丈夫だよ、せんぱい。


ちゃんと通じてるから。

ちゃんと、想っているから。


絶対、離したりなんか、しないから。