「…凰香ちゃん、ちょっと話をしようか」
ぽんぽんと、頭の上で手のひらを2回バウンドして、せんぱいはよしよしとわたしの頭を撫でる。
そして、となりの椅子に座るように、「おいで」と、その椅子を叩いた。
…話って、なんだろう。もしかしなくても、この間のことだよね。
せんぱいの隣に座るのは少し恥ずかしくて抵抗があったけど、そのまま導かれるように座った。
「…ちゃんと、来るんだね」
「…せんぱいが来てって言ったんじゃないですか」
「ふ、そうだけど」
静かな控え室に、響くわたしたちの声。
時計の針は、もうすぐ午後の3時を刺そうとしていた。
「…この間、メールでも送ったけどさ。ちゃんと2人を祝福できたよ、俺」
「はい、聞きました。せんぱいが笑えたなら、わたしはもういいです」
せんぱいが、あの2人とまた同じように笑えたのなら、それでいい。せんぱいたちが、どんな高校生活を送って来たのかなんて、わたしには分からないけど。
「…ん。すげー笑えた。ヒロくんのプロポーズの言葉でね」
「聞いたんですか!?」
「いや、想像しまくっていじってた。結局、本当のところは教えてくれなかったけどね」
「へえ〜」
やっぱり、加野せんぱいはヒロさんとも仲がいいんだ。好きな人の恋人だから、色々あったんだろうけどな。
…加野せんぱいだから、笑えてるのかな。
「…とりあえずさ、俺は自分で思ってたよりも、前に進めてたことが分かった。凰香ちゃんのおかげだよ」
……せんぱい。