木曜日の自分が急に恥ずかしくなって来て、せんぱいの前で小さく丸まった。

眠っている加野せんぱいの様子も見守りたいけど、それも見透かされそうで迷っていると、その瞬間に、くすくすと軽い笑い声が部屋に響く。


「…え…?」


小さな笑い声。それと同時に揺れている、目の前の身体。

……。もしかして。

もしかしなくても、せんぱい…?



「…!?せんぱい、起きてるんですか…!?」


もう、隠すつもりもないくらい、上下に揺れている肩。それを鷲掴みにして、わたしの方に向ける。

すると、笑顔で顔を歪ませている加野せんぱいが。


「〜っ! せんぱい!!」

「ははは、ごめんごめん。いや、凰香ちゃんの声で起きたのは本当なんだけど、それから何を言うかなって思ってたら、俺から離れたり近づいたり、面白い動きしてたから、思わず…っくく」

「もう!!いじわる!!」


わたしの声で起きたって。目が覚めたなら、素直に教えてくれればいいものを。

ずっと、わたしが考えを巡らせていたところを見られていたというのか。


「ごめんね。声をかけるタイミングが分からなかった」

「絶対ウソだ」

「本当だって。疑うなよ」


まだ少し笑っている加野せんぱいは、恥ずかしさで真っ赤になっているであろうわたしの頭に手を伸ばした。


「…ごめんね。起こしてくれてありがとう」


「…っ」


やさしい手。今日も、わたしをどきどきさせる手。