「…それでもわたしは、加野せんぱいのことがすきです」

「…凰香ちゃん、」

「…だいすきです…」


加野せんぱいのこと、どれくらい知っているかなんて、そんなことを、問いただした日もあったけど。

そんなもの、ほとんどなくて。

それどころか、知ろうとする努力も、できていなかった。


せんぱいが、こんな気持ちを持ちながら今まで生きてきていたこと、わたしは知らなかった。

きっと、誰にも言っていなかった。

わたしにだけ、教えてくれた。



「…わたしに、ひどいことは出来ないって。そういう風に思ってもらえただけで、嬉しいです…」

「…凰香ちゃん、」

「嬉しいから、そんなこと、言わないで」



わたしは、まだまだ知らないことばかりで。

年齢も2つも下。頼りないし、せんぱいの後をついていくのがやっと。

それでも、こんなわたしにでもできることがあるなら、せんぱいのことを受け入れてあげたいと思った。


その想いを、ムダにしたくなかった。



「…うん、ありがとう凰香ちゃん」

「…っ」

「…ちょっと、落ち着いた。凰香ちゃんがいてくれて、よかった」

「…もう、大丈夫なんですか…?」

「うん。ちゃんと2人の話、聞いてくる。もう気持ちはなくても、幼馴染としては、やっぱり大事なやつだから」

「…っ」


加野せんぱいは、もう一度やさしく笑うと、これでもかと言うくらい、わたしの頭を撫でてくれた。