午後3時、きみと夢のなか



「…俺、本来はこーいう奴なんだよ、凰香ちゃん」


…せんぱいの声が、また震えてる。

さっきよりもくるしそうな顔。わたしを見る目は、悪いことをして叱られている子どもと同じだ。



「——君花のこと、生まれた時から高校の時まで、ずっと好きだった」



暗闇の中で響く、加野せんぱいの震えた声。
そして、それから紡がれていく、せんぱいのほんとうの気持ち。


「…高校の、時まで…?」


…そうなんじゃないのかな、って、思ってた。

真大さんの話とか、さっき2人に会った時の加野せんぱいの表情とか、突然こうやってわたしのところに来て2人から離れてたこととか。

そういうので、きみかさんとは何かあるんじゃないのかなって、思ってた。



「…生まれてから、ずっと気持ちを隠して生きてきた。君花のことを好きでいたけど、自分の気持ちを隠したまま、君花の代わりになる女の子と遊んでばかりだった。…でも、高校3年の時、君花に好きだって伝えた。でも、その時はもう、君花はヒロくんのことが好きになってて、2人は付き合ってて…俺は、振られた」

「…」

「…それから、今の大学に入った。時間をかけて、君花のことは吹っ切った。メールが来ても、電話が来ても、今日みたいにたまに会っても、大切だけど好きだって気持ちは、もう過去のものになってた」

「……うん、」


「…でも、さっき。唐突に結婚の話を聞いて、戸惑った。好きな気持ちは本当にないと思ってる。けど、どうしてなのか分かんないけど、すごく、戸惑って…」

「…うん」


左肩に乗って来た重み。少しだけ震えている肩。
それのすべてを、わたしに預けてくれている。

かっこ悪いところを、曝け出そうとしてくれている。

…そんなせんぱいを、こんな状況なのに、やっぱり愛しいと思ってしまう。



「…凰香ちゃんに、甘えてしまいそうになった。本当に、最低なことした」

「…」


さっきから、最低最低って、そんなことばかり言ってる。

加野せんぱいは、最低なんかじゃないのに。

せんぱいは、「余裕ないから」って、最初にちゃんと言ってくれた。危ないからやめなって言われたのに、それでもせんぱいに手を伸ばしたのは、わたしだ。