ずっと触れてみたかった、ふわふわの髪の毛に反対側の手を添えた。
そしてそのまま、頰まで滑らせて、両手でせんぱいの顔を包む。
「…そんなこと、しないですよ」
いつもはカッコいい加野せんぱいなのに、なんだか、違う人みたいだ。
…でもね、せんぱい。
こんなせんぱいでも、わたしは…。
「——わたしが、せんぱいのことがすきだから、そんなことしません」
わたしは、加野せんぱいが、だいすきだから。
だから、いいんだよ。弱いところを見せても、笑わないよ。
「———っ」
じっとせんぱいの方を見つめていたら、頰を包んでいた両手は、そのままぎゅっと握りしめられた。
そして、そのままグッと、せんぱいの方に引っ張られる。
「……、加野せんぱい…?」
フワッと、身体に被さってくる毛布。
いつのまにか、起き上がっている身体。
真面目な顔をしている、加野せんぱい。
何が起きたのか、最初はよく分からなかった。
だけど、目の前にいる加野せんぱいは、被せた毛布ごとわたしを引き寄せて言った。
「———ごめん、ひどいことした」
低い、低い落ち着いた声。
「…ひどいこと…?」
「…うん。本当、絶対にしたくなかったこと、してしまった。ごめん」
「…」
…ひどいことって、なに…?



