電気もつけないで、鞄と上着を床に下ろしたら、そのまま2人でベッドに倒れこんだ。
あっという間に、加野せんぱいとの距離が、今までで一番近くなった。
せんぱいはわたしに覆い被さるように倒れていたけれど、しばらく経つと、そのまま少し身体を浮かせて、わたしの頰を優しく撫でてくれた。
「——…ばか凰香、」
「…ばかじゃ、ないです」
「…っ、ばかだよ…」
…そして、そのまま落ちてくるくちびる。
はじめての、加野せんぱいとのキス。
ずっと好きだった人とのキス。
「…っ、せんぱ…」
少しずつ深くなっていくそれは、想像していたよりも、すごくすごくやさしかった。
せんぱいは、こんな風に女の子に触れるんだと思った。しあわせだった。
「……凰香ちゃん、」
「っ…は」
「——…凰香、」
「…っ、ん…?」
激しくなっていく息遣いの合間に、加野せんぱいはわたしの肌に触れながら名前を呼ぶ。
ボーッとしていく意識の中で、加野せんぱいがわたしの方をじっと見ているのに気づいて、その頰を撫でた。
「…なあに?加野せんぱい」
「…俺を、なぐって」
「…え?」
「俺をなぐって」
わたしの手のひらが触れたのをキッカケに、ハッとしたような顔つきになった加野せんぱい。
大きな手のひらを上から被せられて、ぎゅっと握られる。
…切なそうな顔。こんなせんぱい、初めて見たよ。
せんぱいも、こんな顔、するんだね。



