午後3時、きみと夢のなか



電気もつけないで、鞄と上着を床に下ろしたら、そのまま2人でベッドに倒れこんだ。

あっという間に、加野せんぱいとの距離が、今までで一番近くなった。


せんぱいはわたしに覆い被さるように倒れていたけれど、しばらく経つと、そのまま少し身体を浮かせて、わたしの頰を優しく撫でてくれた。


「——…ばか凰香、」

「…ばかじゃ、ないです」

「…っ、ばかだよ…」



…そして、そのまま落ちてくるくちびる。


はじめての、加野せんぱいとのキス。

ずっと好きだった人とのキス。


「…っ、せんぱ…」


少しずつ深くなっていくそれは、想像していたよりも、すごくすごくやさしかった。

せんぱいは、こんな風に女の子に触れるんだと思った。しあわせだった。


「……凰香ちゃん、」

「っ…は」

「——…凰香、」

「…っ、ん…?」


激しくなっていく息遣いの合間に、加野せんぱいはわたしの肌に触れながら名前を呼ぶ。


ボーッとしていく意識の中で、加野せんぱいがわたしの方をじっと見ているのに気づいて、その頰を撫でた。


「…なあに?加野せんぱい」

「…俺を、なぐって」

「…え?」

「俺をなぐって」


わたしの手のひらが触れたのをキッカケに、ハッとしたような顔つきになった加野せんぱい。

大きな手のひらを上から被せられて、ぎゅっと握られる。


…切なそうな顔。こんなせんぱい、初めて見たよ。


せんぱいも、こんな顔、するんだね。