午後3時、きみと夢のなか



だから、わたしにも気持ちを少し分けてよ、せんぱい。



「…ダメだって。今の俺、ちょっと色々混乱して余裕ないから。ほんとに、ちょっと…」

「加野せんぱい」

「…っ」


少しだけ歪んだ顔。油断した顔。

それが見えた途端に、加野せんぱいは手のひらで顔を隠そうとするから、それを制すように、せんぱいの手を握った。


…見えた顔は、やっぱり少し、くるしそうな顔をしていた。


「…せんぱい、嘘はダメです」

「…っ」


…なんとなく、せんぱいが考えていること、分かってしまった。

だって、せんぱいを一瞬でこんな顔にしてしまったのだから、原因なんてひとつしかないじゃない。


きみかさんしか、いないじゃない。




…でも、なんでだろう。

今までみたいに、大きな嫉妬心は不思議となくて。

それよりも、目の前のくるしそうな加野せんぱいを、どうにかしてあげたかった。

わたしにだけ見せてくれた、今の加野せんぱいを、大事にしたいと思った。



「…せんぱいのこと、本気で想っている人だって、いるんです」



目の前の愛しい人を、助けてあげたいと思った。

ただ、その想いだけしかなかった。






わたしがその言葉を呟いた途端、加野せんぱいはわたしの手のひらから鍵を取り出して、そのままドアを開けた。

わたしから繋いだ手のひらは、まだ繋がれたまま。

その手を引かれながら、家の中へ入っていく。