午後3時、きみと夢のなか



加野せんぱいの、横に垂れた手のひらは、何かを決めたように、ぎゅっと固く握られた。


「…そっか。じゃあ、詳しく話聞いてやんねーとな。特にヒロくんのプロポーズの言葉とか」

「ははは、そうだね」

「ぜってー話さねー。つーか、きみかも煽るなよめんどくさいから」

「ははは」




——ねぇ、加野せんぱい。

今、どんな顔してる…?



「んじゃ、これ俺の家の鍵だから。先に開けて入っててよ。俺、これからこの子を家まで送ってから帰るから」

「え…っ!?」


加野せんぱいは、わたしに顔を向けないまま、ぐっとわたしの手のひらを握った。

ていうか、家まで送るって、もうすぐそこなのに…?


「い、いいですよ、せんぱい!きみかさんたちと、そのまま帰ったら…」

「いーから。ほら、帰るよ」

「えっ…!?」


そしてそのまま、せんぱいはきみかさんたちを置いたまま、わたしの手を引いて歩き出す。

繋がれた手は冷たい。すっかり寒い空気にあてられて冷え切っている。

でも、大きな歩幅。まるで、さっきの場から逃げ出そうと言わんばかりの勢い。


「…せんぱい…?」

「……」



それでも、せんぱいは一言も話さずに、ずっと前だけを向いて歩いている。


…こんな強引なせんぱい、わたしは見たことがない。

突然、きみかさんたちから背を向けるなんて、どうしちゃったの、せんぱい。





アパートには、本当にすぐに着いてしまった。でも当たり前だ。さっきいた場所から1分程で着くようなところにあるから。

鞄の中から、鍵を取り出す。

ここまで来るのに、一度も話さなかった加野せんぱいは、わたしの方を見るわけでもなく、ボーッと別のところを見ては何か考え込んでいるようだった。


「…せんぱい?」

「……」


…加野せんぱい、どうしちゃったのかな。