「まったく、突然来るとか言うんだもんよ。お前らが休講だとしても、こっちはレポートと実験に追われてんだから、せめて1週間前には連絡ちょうだい?」
はぁ、と、白い息を吐きながら、君花さんとヒロさんに抗議する加野せんぱい。
「へへへ、ごめんね。朔ちゃんの迷惑にはならないようにするから。それに、ちゃんと直接言いたいことができて」
「…。言いたいこと…?」
…わたし、もしかしてここにいるの邪魔なのかな。
家も、もうすぐそこだし、このまま帰っちゃった方がいいのかもしれない。
…なんとなく、今日の大きなモヤモヤも、少しだけ解消されたし。
——そう思って、加野せんぱいたちに背を向けようとした、その時だった。
「3月に卒業したらね、結婚することにしたんだ」
…君花さんの、さっきよりも落ち着いた声で、その言葉が放たれたのは。
「…え………?」
—— 結婚…?
きみかさん、隣にいるヒロさんと結婚するってこと…?
「…結婚、すんの…? もう…?」
加野せんぱいも、驚いている。でも、そうだよね。これは人生においても重大発表のひとつだよ。
「うん。わたしも飛呂くんも、就職先決まったし。お金も学生のうちに貯めたから、大学を卒業したら、籍を入れるつもりでいる」
凛とした、前向きな、きみかさんの声。
わたしも思わず振り返って、2人の方を向いた。
…そして、加野せんぱいの方も。
「うちの家族にも、飛呂くんの家族にも話はもう済んだから。次に話すのは、朔ちゃんが良いって思って」
「………、それで、わざわざ?」
「うん、そうなの」
「…」
…きっと、加野せんぱいはものすごく驚いているんだ。
だって、幼馴染が結婚するなんて。
嬉しいけど、戸惑いは大きいに違いない。
でも、なんでだろう。
きみかさんたちを見る加野せんぱいの目も、加野せんぱいを見るきみかさんの目も、
どこかやっぱり、切なくて。



