「相変わらず暗いよな、ここ。俺でも怖いもん」
気がつくと、家の近くまで来ていた。
この間、真大さんと帰って来た時はそんなに思わなかったのに、やっぱり加野せんぱいと歩いてると時間があっという間だ。
…それくらい、せんぱいと一緒にいられることが、嬉しくて仕方ないんだな。
どうして、もっと遠いところにしなかったんだろうって、この時ばかりは思ってしまうよ。
「…せんぱい、この辺で大丈夫ですよ。もう、すぐそこなので」
身体が、芯から冷えるような感覚がする。もう真冬だ。
向かい合わせになったせんぱいの口元からも、次々と白い息が生まれている。
とっても寒いのに。この中をずっと歩いているだけでも大変なくらい、冷えるのに。
せんぱいと一緒にいると、そんなことも忘れてしまう。
「え?でも、すぐそこならそこまで…」
「いいんです。せんぱい、お客さん来るって言ってたじゃないですか!だからもう、早く帰らないと!」
…嫌なことも忘れてしまうくらい、せんぱいがすき。
でも、せんぱいはこれから、別の人と一緒に夜を過ごす。
別の人が待っているところに、帰っていく。
…あぁ、いやだ。
また、会ったこともない人に、こんな感情を向けてしまうなんて。



