そう言った瞬間、せんぱいは吹き出した。
だけどそれはすぐに大きな手のひらによって受け止められて、そのあとは数回、肩を揺らしながら堪えていた。
「…な、何笑ってんですか…!」
こっちは真剣に話してるのに。やっぱり、子どもの言うことにしか聞こえないんだ、せんぱいにとっては。
もう、ここまでくると、情けなくなってくる。
「…はは、違う違う。ごめん」
「何が違うんですか!?」
「だから聞けって、まったく」
「…」
肩を揺らしているせんぱいに、少しだけ怒りが芽生えてきた頃。
せんぱいはさっきのような真剣な顔つきになって、わたしの方をじっと見た。
「…笑ってごめんね。でも、優しくしてんのは、ぜんぶ、俺の自己満足だから」
「え…?」
…加野せんぱいの、自己満足?
それは、どういうこと…?
「俺だって、凰香ちゃんが真大に頼るのが嫌なの。だから、俺が送って行ける時は、俺がちゃんと送り届けたいんだよ」
「———…え?」
………。
…今、もしかしたら少し幸せなことを言われたかもしれない、って
そう理解するのに、数十秒時間がかかった。
「だから、今日は俺に甘えて。言いたいことあるならちゃんと伝えて。俺のことで泣いてんなら、ちゃんと俺の前で泣いてよ」
「……」
でも、せんぱいがあまりにも真剣な顔でわたしにそんなことを言うから、わたしの心臓は思ったよりも穏やかで。
わたしの、せんぱいを想う小さくて臆病な恋心は、
その奥で小さくキュッと音を立てていた。



