「…凰香ちゃん」
「…っ」
それでも、目線を合わせてくれたせんぱいに、わたしは何も言えなくて。
やっぱり、顔を見ると、せんぱいへの想いが次々に溢れてきて。
そして、見たこともない、会ったこともないせんぱいの幼馴染に、嫉妬してしまう。
…ほんと、ばかみたい。
「…凰香ちゃん、今日はちゃんと俺に送らせて。お願いだから」
「…っ、でも」
「でもじゃなくて」
「…!」
伸びてきた指が、目尻に触れた。
まだ残っていたのか、そっと涙を拭われて、せんぱいは笑ってくれる。
そのやさしい笑顔に、心臓がドキッと跳ねた。
「…なんで、こんなに優しくするんですか。やめてください…」
…わたしのこと、そんな風に見ないでほしい。わたしは、せんぱいのこと、本当に好きなのに。
「…優しくって、どーいうの?」
「それは…、家まで送るとか、こうやって涙拭うとか、もう、全部です…」
「……ふーん…」
ふーんって。
なんですか、その余裕の笑顔は。
「そーやって子供扱いするのも、ヤです」
せんぱいにとっては、わたしなんてまだまだ子どもかもしれないけど。



