午後3時、きみと夢のなか



「…あれ、凰香ちゃん…?」

「…!」


室長のところに行くと言って控え室を出た。でも涙が出てきちゃったから、その近くで涙を拭っていると、ちょうど出勤してきた真大さんに声をかけられてしまった。

…あぁ、まだ鼻水がズビズビ言ってるのに。最悪だ。


「えっ…。ちょ、なんで泣いてんの…?」


びっくりした顔で近寄って来る真大さん。小さくボリュームを下げてくれているのは、きっとこの人のやさしさ。


「なに?朔太朗となんかあった?それとも、他に泣くようなことがあったの?」

「…っ、いえ、あの…」


…まずい。これはまずい。親友の彼氏に泣き顔を見られて気を遣われているというのは、ちょっとよろしくない。自分的に。


「…大丈夫、です。もう落ち着いたので」

「本当に?びっくりしたんだけど」

「…はい、大丈夫です。すみません」


顔を覗き込んでくれる真大さん。やさしい人。でも、真大さんをわたしの話に巻き込むわけにはいかないから。

結の、大切な恋人だから。


最後の涙を拭って、無理やり笑顔を作って真大さんの方に向けた。


…そうだ、ここはバイト先。これから加野せんぱいと一緒に仕事をしなきゃいけないのに、泣いてちゃダメだ。

ちゃんと、いつも通りにしなきゃ。