午後3時、きみと夢のなか



せんぱいの顔が見れなくなって、いつものように栄養ドリンクだけを置いて、控え室を出ようとした。

せんぱいの顔を見たら、声を聞いたら、涙が出てしまうかもと思った。


「…ちょっと、室長さんに、質問することがあるので行ってきます…」

「えっ、凰香ちゃん?」

「…っ」


だって、もう聞かなくても分かっちゃったんだもん。

だってわたしはもう、せんぱいが大切にしている幼馴染が、女の人だってこと、知っているんだもん。

“ きみかさん ” が、せんぱいの大切な人だってこと、分かっちゃったんだもん。


…これって、告白する前に失恋したのと同じだよ。



ガタンと椅子を動かして、わたしの名前を呼ぶせんぱいを無視して部屋を出た。

やっぱり、予想通り温かい涙は涙袋のすぐ上まで登ってきていて、瞬きをしたと同時に頰を滑り落ちてきた。


「…っ」


今日、このバイトが終わったら、せんぱいは “きみかさん ” と会うんだ。

ふたりがどんな関係なのかはよく分からないけど、でも、わたしが入り込めないほど繋がりが強いのは確かだ。


「…っもう、やだ…」


それなのに、やさしい加野せんぱいのことが好きだと思ってしまう自分が嫌だ。

好きなのに、何もできない自分が嫌だ。

何も努力はしないくせに、こうして現実を突きつけられるたび、弱ってしまう自分が嫌だ。


わたしって、ほんと、わがまま。