いたたまれなくなって、話題を変えようと思って聞いただけだったのに。
「…おさななじみ…って、前にせんぱいが話してくれた…?」
「あ、そうそう。休講で連休になるから遊びに来るんだって」
「…」
まさかの事実を聞いてしまって、わたしの心臓は小さくしぼんでいく。
——“ 大切に思ってた幼馴染が ”
それと同時に前回の真大さんの言葉も蘇ってきて、頭を殴られたように衝撃が走る。
「…そう、なんですね。じゃあ、早く帰らないと…」
…幼馴染って、女の子だよね。あの、せんぱいがやさしい声で呼ぶ、“ きみかさん ” のことだよね。
彼女とか、女の人の影がない加野せんぱいが、唯一名前で呼ぶ女の人。
姿も見たことがないのに、わたしが嫉妬してしまっている人。
…というか、女の子の幼馴染なのに加野せんぱいのところに遊びに来るってことは。本当は幼馴染なんかじゃないのかもしれない。
“ 恋人 ” なのかもしれない。
「でも、大丈夫だよ。今日は俺が凰香ちゃんのことは送ってくから」
「…えっ、いいですよ…。お客さんが来るなら、せんぱいは早く帰らないと…」
せんぱいのやさしい声が、瞳が、なんだか今は痛いよ。
だって、大切にしている “ きみかさん ” が来るのに、わたしと一緒にいる時間がもったいないじゃないか。