「……ん、」
「…!」
せんぱいの向かい側に座って、じっと寝顔を見つめていたら、閉じていた目がぱちぱちと瞬きを始めた。
その瞬間に、驚いたわたしの身体は飛び跳ねて。
「…ん、凰香ちゃん…?」
心臓は、ばくばくと動き出す。
「…か、加野せんぱ…」
「…んん、ごめん。さっきなんか言ってた…?」
「…!」
ひえ———!
まさか、わたしが呟いた「すき」が聞こえてた!?
「な、何も言ってないですよ!?」
ウソ、待って、誤魔化さないと。
眠っている間にした告白なんて、バレたら恥ずかしすぎてしんじゃうよ。
「…ん、ほんと…?ごめん、俺寝てたから、夢と現実がごっちゃになってんのかも…」
「…っ」
夢と現実がごっちゃって。じゃあ夢の中ではなんて聞こえてたんですか…。
まったく恥ずかしいったらありゃしない。今度から気をつけよう。
「せんぱい、」
「うん?」
前髪を直しているせんぱいに話しかける。
「…今日は、また帰りも大学ですか?」
別に、予定を聞いてもいいよね。なんとなく、毎回聞いてることだし。
「んーん。今日は直帰。幼馴染が泊まりに来るんだよね」
「…………、え?」
…サラリと、何の前触れもなく呟かれた言葉。
——“ 幼馴染 ”
その言葉が、あっという間に脳内にこびりついて、取れなくなった。