…わたしは、加野せんぱいのこと、どれくらい知っているのかな。
「朔太朗ね、アイツもなんで教師にならないのかなってくらい、子どもの扱い上手いんだよな〜。結構悔しいんだよ」
「あ〜!分かります!加野せんぱい、絶対先生にも向いてますよね!ひとりっ子って言ってたのに、すごいなって思いながらいつも見てるんです」
悔しそうに真大さんがボヤいている時、思わず加野せんぱいの株を上げる発言をしてしまう。
…間違えた。でも仕方ない。だって本心だもん。
「なんていうか、子どもの目線に立って考えるのが上手いんだよな。まぁ、手のかかる幼馴染が近くにいたって言ってたし、それもあってのあの包容力なのかね」
「…」
わたしのミスも気にせず話を続けてくれる真大さんの発言に、わたしがピタリと反応してしまった。
「…幼馴染?」
そう言えば、前にもそんなこと言っていたような気がする。ひとりっ子だけど、幼馴染がいて、その子の面倒をよく見ていたって。
その時わたし、なるほどなって思っちゃったんだ。幼馴染はいいなって。
「そうそう。確か朔太朗と同い年の女の子なんだけど。結構大切にしてたみたいだからね。色々と世話焼いてあげてたんじゃないのかな」
「————…」
…そう、いいなって、思ってたの。
わたしには、“ 幼馴染 ” なんて言える人が、あまりいなかったから。
だから、せんぱいの小さい頃をよく知る人がいるなんて、羨ましいって。
…でも、それが “ 女の子 ” なんてことは、知らなかった。