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あれから、加野せんぱいはすぐに仕事を終わらせて、わたしたちよりも少し早くバイト先を出た。

わたしは帰ってきた真大さんと、後片付けをしてそのまま一緒に出た。

結に改めてメールすると、ものすごく驚いている内容が送られてきていて、でもすごく嬉しそうにしてくれた。


「結が、すげー喜んでる。会えたんだ!つって」


帰り道、真大さんは笑いながら教えてくれた。スマホの画面を見つめる横顔は、結を想っているのか、とてもやさしい。


「真大さんのこと、写真でしか見たことなかったので。バイト先同じなのは知ってたんですけど、まさか今日会えるなんて思いませんでした」


暗い夜道を、2人で歩く。いつもは横に加野せんぱいがいるはずなのに、なんだか今日は変な感じ。
でも、親友の彼氏だからか、あまり初めて一緒に帰る感覚があまりない。緊張もしない。


「俺もだよ。朔太朗に会っただけでもびっくりしたのに、その上、結がいつも話してる子にたまたま会うなんてさ」

「ははは」


真大さん、加野せんぱいのことは、下の名前で呼ぶんだなあ。やっぱり結構、仲良しなのかもしれない。


「朔太朗、いい奴でしょ。色々丁寧に教えてくれるんじゃない?」

「あ、はい!そりゃあもう、最初の授業から隅々まで教えてくれてました。お陰で今なんとか1人でも子どもを見られるようにはなったんですけどね」

「ははは、やっぱな〜〜」


真大さん、加野せんぱいのことをよく見てるんだ。せんぱいがやさしいこととか、丁寧なこととか、よく知ってる。