午後3時、きみと夢のなか



つらつらと文字を書き連ねるせんぱいを見ると、今日結に言われたことを思い出した。


“ 加野さんに直接聞くのが一番だよ! ”


「…」


…結局、まだ聞けてないや。“ きみかさん ” が誰なのかってこと。せんぱいにとって、どんな人なのかってこと。

やっぱり、本人を目の前にしてしまえば、そんなに簡単に聞けるようなことじゃないし。今日のせんぱいは、なんだか急いでるみたいだし。

今話しかけるのも、申し訳ないしね。


“ きみかさん ” のこととか、彼女のこととかは、また別の機会に聞ければいいよね。

…うん、そうしよう。



はぁっとため息を吐く。

結はどうやってあんな素晴らしい彼氏を手に入れることが出来たんだろう。そう言えば、どんなことがあったとか、あんまり聞いたことがなかったなあ。

ちゃんと、聞いておけばよかった。

でも、とにかく苦労したって、頑張って同じ大学に入ったって言っていたから、きっと結なりに本気で努力したからこその結果なんだろうな。

それは、言われなくてもちゃんと分かる。


…わたしも、そのくらいの努力をしないと、加野せんぱいと同じ気持ちになることはできないってこと。



「…凰香ちゃん?」


しばらく、ペンの先を見つめながら考え事をしていたら、加野せんぱいの声がかかった。


「えっ…?」


ぼーっとしてた。なんだっけ。今、わたしなにか聞かれた?