午後3時、きみと夢のなか



「…今日は大丈夫です」


今日は、我慢しよう。


「え?そう?危ないんじゃない?」

「…いえ、わたしの家、大学と真逆だし。せんぱいの課題や研究の邪魔はできないです」


…本当は、お家まで一緒に歩きたいけど。でも、そんなわがままを言ってる場合じゃないし、本当にせんぱいの邪魔はしたくない。

少しの間、せんぱいはわたしの方をじっと見ていたけれど、そのうち「そっか」と呟いて向かい側に座った。




「うあ〜〜。やっと迎えに来てくれたわ〜〜」


加野せんぱいと向かい合わせに座って、子どもたちの今日の様子を書き込んでいると、保護者への引き渡しが終了したらしい真大さんが戻ってきた。


「おう、真大。終わったのか」


さっきまでのわたしたちと同じように、机に倒れこむ真大さん。3年生を担当していたからか、かなりの体力を消耗したらしい。クタクタだ。


「まじで疲れた。もう何もしたくないわ」

「は?何言ってんだよ。俺はこれから大学で課題をやらなきゃいけないっつーに」


泥のように雪崩れ込む真大さんを目を細めて見ながら、加野せんぱいはため息をついた。


「理系は大変だよな、毎日毎日実験で。その分教育はまだマシだわ。なぁ凰香ちゃん」


加野せんぱいの呟きを軽く流しながら、わたしに話を向ける真大さん。
でもまぁ確かに、加野せんぱいの多忙さを見てたら、わたしたちの学部はまだマシなのかなぁ。必修科目多すぎるけど。


「つーか、これから凰香ちゃん帰るの?家、結のところと近かったよね。送ってやろうか?」

「えっ」


突然の真大さんの提案。コロコロ変わっていく話題に、目が回りそうだ。