赤ペンで大切なことを書き足しながら、今日の予習を行なっていく。

いずれは先生になるんだし、わたしだって教える力を付けて行きたい。そのためにこのアルバイトをしているのだから。



「…ん、予習してんの…?」


ペラペラとページをめくって、その都度書き込みを続けていたら、向かい側から低い声が響いた。


「…!加野せんぱい…!」

「はは。今日は “ 加野さん ” じゃあないんだ?」


眠そうに目を擦りながら、乱れた前髪を直すせんぱい。机に顔を押し付けていたからか、頰には赤い跡がほんのりと付いていた。


「…まだ、せんぱいと2人なので、セーフです」

「ははは。なにそれ」


笑いながら目を開けて、隣の栄養ドリンクに手を伸ばす。それと同時に、まだ眠そうな顔で「ありがとう」と言ってくれた。


「…ごめんなさい、起こしました?うるさかったですよね、ガチャガチャと」

「んーん、全然。むしろ偉いね、ちゃんとそうやって予習してさ」

「…っ。だって、加野せんぱいに迷惑かけるわけにもいきませんし。何よりわたしもちゃんと指導力付けたいので」

「…そ。そーいう真面目でちゃんとしてるとこ、凰香ちゃんの良いとこだよ」


栄養ドリンクを喉に流し込みながら、少しタレ目の目をわたしの方に向ける。伸びてきた前髪の間からじっとこちらを見る瞳に、ドキッと胸が跳ねた。