取り出した栄養ドリンクをせんぱいのすぐ隣に置く。

お疲れのせんぱいを起こさないようにゆっくりと動いて、バイトの準備をした。せんぱいが目を覚ますまで、予習だ。

一緒に同じ学年を持っているから、わたしがちゃんとしなかったり手を抜いたりしたら一瞬でバレてしまう。

そんな恥ずかしい思いはしたくなかったし、せんぱいはどんなに忙しくても楽なんかしない人だから、わたしがそれを壊したくなかった。

いつも、せんぱいに置いていかれないように必死なんだ。


「ええっと…、今日の作文のテーマは…」


今日勉強する範囲を広げながら、同時に鞄からノートを取り出す。
1年ほど前から書き始めた、「加野せんぱいノート」だ。

これは、わたしがバイトを始めて、加野せんぱいから教わったことをつらつらと書いてきた、いわばマニュアル本だ。

初めて会った時から今日まで、せんぱいが教えてくれたことやアドバイスを忘れないように書き留めてきた。


「…作文の内容が決まらない子には、無理に書かせないで会話をしながらその子が言いたいことを引き出していく…」


もう、書いてきた量は相当なもの。
いつも、加野せんぱいに助けられてきた証でもあるよ。